知ればなるほど!スーパーフード「こうや豆腐」
日本が誇る伝統食品であり、現代のスーパーフード
「こうや豆腐(凍り豆腐)」は、豆腐を凍らせてから熟成、解凍、脱水、乾燥させる独特の製法で作られている日本の伝統食品です。豆腐に含まれるたんぱく質や脂質をそのまま保持しており、とくに植物性たんぱく質やカルシウム、鉄分、食物繊維が豊富なところが魅力。食後の血糖値上昇や血中中性脂肪値上昇、血中コレステロール値上昇の抑制に効果的というデータもあり、生活習慣病対策につながるスーパーフードとして注目を集めています。
また、常温で長期保存が可能で、いざというときの非常食としても重宝できる食材です。
「こうや豆腐」の作り方
「こうや豆腐」の製造工程を簡単に紹介します。
まず、水分を抑えたやや固めの木綿豆腐を、約-10℃以下の温度でじっくりと凍結させます。凍結させることで豆腐内の水分が氷結し、その結晶が豆腐の組織を破壊します。この過程により、スポンジのような独特の食感が生まれます。
次に、凍った豆腐を一定の温度と湿度を保つ冷暗所で熟成させます。熟成期間は約20日間。この過程で豆腐の風味が深まり、うまみが凝縮されます。
その後、水分をゆっくりと脱水する工程が続きます。脱水により豆腐はさらに軽くなり、風味が一層引き立ちます。
最後に、専用の乾燥室で適切な火力を用いてしっかりと乾燥させます。
「こうや豆腐」を製造するためにはいくつもの工程があり、木綿豆腐を作る工程も含めるとその数は20ほどです。ひとつひとつを丁寧に行うことで、独特な食感と風味を作り出し、長期間保存が可能な魅力的な食品に仕上げられています。
地域ごとに異なる呼び名と特徴
「こうや豆腐」は、国が定めた正式な名称では「凍り豆腐」といいます。実は凍り豆腐は地域によって異なる呼び名や独自の製法があり、その土地ならではの文化や風習が色濃く反映されています。
たとえば、関西圏では「高野豆腐」として親しまれ、とくに大阪の河内地方では「ちはや豆腐」と呼ばれています。また甲信越や東北地方では「凍み豆腐」として知られ、厳しい寒さを利用して自然乾燥させる手法が特徴です。また寒い地方では豆腐をひもで連ねて凍結させて作る「連豆腐」というユニークな凍り豆腐もあります。北海道では「一夜凍り」と呼ばれる製法があり、豆腐を凍らせたその日に食べてフレッシュな風味を楽しむ方法が根付いています。
ルーツと歴史
凍り豆腐のルーツにはいくつかの説がありますが、有力とされる説を2つ紹介します。
まずは和歌山県の高野山に由来する「高野豆腐」の説です。今から800年ほど前の鎌倉時代に、高野山の高地の厳しい寒さによって豆腐が自然に凍り、それが新たな食感とおいしさを生み出したことから、高野山を中心に関西で広まったとされています。
もう1つの説は、長野や東北地方で作られる「凍み豆腐」が起源です。冬の極寒の中で豆腐を藁に編んで吊るし、夜間の冷気で凍らせ、昼間の陽光で溶かしながら自然乾燥させる過程で、脂肪が酸化して独特の風味が生まれたとされています。
明治時代以降、凍り豆腐の製造は産業化が進み、手作業から機械化へと移行していきました。これにより大量生産が可能となり、保存食としての価値が再認識されるとともに、より多くの人々に広まりました。また、製造技術の発展により安定した品質で提供できるようになり、現代の家庭でも手軽に料理に使える食材として定着していきました。
アイデア次第で使い方が広がる「こうや豆腐」の種類
「こうや豆腐」には、さまざまな種類があります。一般的なものは、手のひらよりやや小さい長方形の「1枚タイプ」です。ほかには、ひと口サイズにカットされた「サイコロタイプ」や、「細切りタイプ」「うす切りタイプ」などもあり、中には戻さずにそのまま使えるものもあります。煮もののイメージが強い「こうや豆腐」ですが、炒めものやサラダ、スープの具にするなど、いろいろな料理で楽しめます。
また、「粉末タイプ」も最近は見かけるようになりました。パウダー状なので、ハンバーグのつなぎやスープのとろみ付け、ケーキやクッキーの生地に加えるなど、活用の幅がぐんと広がります。